初級リポート【3月定例・勝手にしまなみ縦走】

プロローグ 


日曜日の早朝。 

スマートフォンのアラーム音が耳をつく。 

時刻はまだ午前5時を指していない。 

いつもであれば、起き上がるまでゆうに5分や10分は費やすが、今日は数瞬で覚醒する。

まるで遠足の日の小学生のようだ。


ベッドから勢い良く立ち上がると、
その足で廊下の窓を開けに行く。

窓からにゅっと顔を突き出し、外の様子を注意深く観察する。 

あたりはまだ闇に覆われているが、雨音は聞こえてこない。 

風もまだ強くは吹いていないようだ。 


階下に降り、いつもより数時間早い朝食をとりながら、スマートフォンで気象情報をチェックする。

今日の最低気温、最高気温、降雨確率、雨雲レーダー、そして風速とその向きなど、確認する項目は多い。 

特に昨晩から大きな変更はないようだ。 


最低気温と最高気温は、当日のウェアに大きく影響する。 

ベースレイヤーはどうするか。 

その上に半袖ジャージを着るのか。 

アウタージャケットは、どの程度の寒さに耐えうるものにするのか。 

ウインドブレーカーは必要か。またはジレで十分か。 

そして、足先を外気の寒さから守るためのシューズカバーを付けるのか… 

気温の差が大きい日は、アウターを着たり脱いだりして温度変化に対応するが、冬場は着用するウェアが格段に多くなり、悩みが増える。 


降雨確率や雨雲レーダーは、このスポーツを楽しむ者にとっては大変重要な情報である。 

ソロや少人数で走る場合は、雨雲レーダーの予想によって急遽コースを変えることもしばしばである。 


そして風向きと風速は、その数値によって往路と復路の難易度や危険度を予想するのに役立つ。 

あまりに風速が強い場合は、予定そのものを取りやめる場合もありうる。 

今日は昼前から西風が強くなり、往路は追い風になるポイントが多いが、復路は強烈な向かい風に悪戦苦闘することになるだろう。 

またこういう日の橋の上では、予想を超える突風が吹くので、相当に注意が必要だ。 


安全にグループで楽しむためのパラメーターを頭に叩き込みつつ、一般人には理解し難い、極限までタイトな専用ジャージを身につける。


手早く着替えをすますと、これからの一日を楽しむための 「相棒」を玄関から外に担ぎ出す。


その胴体は、大小二つの三角形を組み合わせた形をしており、その前後には頼りないほどの幅しかないタイヤを履いた大きなホイールが配されている。

そしてクネクネと下向きに曲がった、悪魔的な特徴を持つバーを頭頂部に戴く。

 

そう。ロードバイクと呼ばれる競技用自転車だ。 


今日は所属するサイクリングチームの、今年最初のグループ走行の日である。 


まだ夜が明けきらぬ暗闇の中で、フロントとリアのライトを点灯させ、サイクルコンピュータを起動させる。 

ロードバイクのトップチューブにまたがり、シューズをビンディングペダルに乗せ、ぐっと押し込む。

パチンという乾いた音が、早朝の住宅街に響く。 

脚とクランクを一体化させるための儀式の音だ。 

真新しいカーボン製のホイールは、クランクを回す最初のひと踏みで軽やかに回転を始め、ロードバイクとその乗り手の背中をスッと押し出した。 


自宅から数十キロ離れた場所が本日のグループライドの集合場所だが、その前に一人のサイクリストと合流する。 

金曜日の夜に開催される強者集団の練習会を束ねる彼は、コンビニの店内で静かにホットコーヒーを飲みながら私の到着を待っていた。 

端正な顔立ちをもつ彼は、むろん剛脚の持ち主だ。 

この地域のトレーニング・ジャンキー達で彼の名前を知らぬ者などいないだろう。 

都合でグループライドには同行できないが、集合場所までの山岳路を練習として一緒に走りたいと、数日前に彼から申し出があったのである。 


挨拶を交わしながらコンビニを出て、それぞれの愛機にまたがる。 

ようやく白みだした空の明かりを受けた道路に、ゆっくりとロードバイクで乗り入れる。

 

出発してしばらくは二人でトレインを組み、ほどほどと言える速度で流して走る。 

早朝の澄んだ空気が心地良い。 

車に邪魔されず、自分たちだけで道路を占有できるこの時間帯は、サイクリストにとって幸福なひと時だ。 


しかし計測開始地点を超えた刹那、彼が持てるパワーを解放し、弾けるように速度を上げるのは想像に難くない。 

彼を追走するのか、それを容認し、終盤で追いつくことを期待してペース走に徹するのか… 

どちらにしてもこれから峠までの半時間ほどは、自転車を趣味に持ったことを激しく後悔するほど、苦しく、そして辛い時間が続くことになるだろう。 


三叉路を右に曲がり、計測開始地点が目前に迫る。 

「ここから計測開始!」 

後ろにつく彼を振り返りながら叫ぶ。 

彼は大きく頷くと、リアスプロケットのギアを一段上げ、出力を一気に上げた。 

私の横に並び、追い抜きざま、 

「途中で垂れてたら、回収して下さい!」と叫ぶ。 

つまり、行けるところまで全力でクランクを回し続ける、という宣言である。 

向かい風を切り裂き、少しずつ遠ざかっていく彼の背中を見ながら、私も右手のレバーを内側に倒し込み、ギアを一段上げる。 

彼の清々しいまでの宣言を聞いた今、私もそれに応えなければならない気がした。 

踏み込む脚に体重を一気に乗せる。 

いつまで持つか分からないが、脚と肺と心臓が断末魔の悲鳴をあげるまでクランクを回していこう。

サイクルコンピューターの出力表示が一気に跳ね上がり、心臓の鼓動を示す心拍数が上がり始めた。 


さあ、峠を目指せ! 

サイクリストの一日の始まりだ! 


小説「ヒルクライマー」より(嘘)





というわけで、今年最初のらくりんサイクル定例ライドが開催されましたー!

あ、KenGoです。

プロローグで書いた通り、私は某外環部・MJ部長と一緒にトレーニングがてら、水ヶ峠を超えて糸山に入りました。(その様子は、車で糸山に移動中の吉田さんに目撃されてました^^)


MJ氏のサプライズ登場に、一同驚きます。

私がまたもや、見ず知らずのローディーさんをナンパして来たと思った人もいたようですが笑笑

残念ながらMJさんはここでとんぼ返り。帰りも水ヶ峠経由で、しこたまトレーニングして帰ったそうです。


サンライズ糸山には中級ゆっくり班と快速班、自走の上級班が大集合。

にしても、ちょっと人数が多すぎませんか?

よく見ていると、半分は違うチームの方達でした笑


別チームの集団の中に、知り合いがいるのを発見しました。

ダンディーな口髭を生やしたその青年は、今治のKOM職人、快速でその名を轟かすMOさんでした。

今日は職場の自転車サークルの引率だそうです。道中、どこかでお会いできそうですね^^


さて今回私は、体調を崩された初級班リーダーのジェントルおぉの先輩の代役で、初級班の先導を仰せつかっております。

なので、初級班の集合場所である生口島の瀬戸田まで、中級快速トレインに乗せていってもらうことにします。

先導するhyugaさんのすぐ後ろにつけて、久しぶりに快速トレインに乗せてもらいました。

いやー、やっぱりhyugaトレインは気持ちいいですね〜。hyugaさん、初っぱなから気持ちよくパワーを乗せて走るもんだから、後ろの人から「速すぎる!」って文句をもらってました( ´艸`)


伯方島のいつものコンビニで一旦休憩。

9時30分には瀬戸田サンセットビーチに着いて、初級班の皆さんと合流しないといけないのですが、何気に時計をチェックすると、もう9時をちょっぴり過ぎているじゃないですか。

えーと、ここから瀬戸田までの距離は...

えっ!まだ20kmもあるの( ̄◇ ̄;)

20kmを30分で...ということは平均40km/hの速度でギリですね...

さすがにちょっとヤバイ!

するとイワちゃんが、

「ここからさらに班を分けてKenGoさんを時間までに届けますよ!」と。

「うん、ぜひお願いします❤️プリーズ!」と私。

イワちゃん「みなさん、志願制でお願います!誰か一緒に行きませんか?ただしケンゴさん以外がちぎれた場合、その人は置いていきますー!」

笑笑笑


なかなか手が挙がりそうになかったので、勝手ながら私が指名せてもらいます( ´艸`)

「イワちゃんとhagiさん、それとクボタドールさん、お願いします〜」

本当はhyugaさんもお願いしたいところでしたが、快速班メンバーの先導のお役目があります。

かさっちさんも自ら志願し、早々に臨時特別編成トレインで瀬戸田を目指します。


にしても、イワちゃんの速いこと速いこと💦

ヒルクライムだけでなく、平坦でも圧倒的なスピードを出せるモンスターになってますね👍


みなさんのお陰で、9時30分集合の1分前に到着することができました!

ありがとうございました<(_ _)>


臨時トレインの皆さんとはここでお別れ。

ここからは初級の皆さんと走ります♪

(やっと、初級のリポートになります^^;)


初級メンバーは、野球の審判も忙しい、心優しきスポーツマンののまっちさん

バイクのみならず、ランもスイムもなんでもこなすアクティブ・ノン子さん

パンのためなら、どんな山岳も越えて平然とロングライドをやってのけるしほさん

グルメのご褒美がないと決して山を登らない、永遠の初心者MIHO(私の奥さん)。

そして、このたび初参加の青年がhiroさん。バイクに乗り始めて半年とのことですが、背が高く、いかにも走れそうな体格で、この先が楽しみな新メンバーです。

そこに私が加わり、6名で尾道を目指すことになります。

(実はマムキンさんも初級に参加予定でしたが、なんと前日からサンセットビーチでソロキャンプを敢行し、あまりの強風に一睡もできず、体調を考えて今回はDNSに... お見送りいただき、ありがとうございました〜!)


平均速度25km/hペースで走ろうとしますが、追い風で気がつけば35km/hで走ってます^^;

(ということは、こりゃ帰りは20km/hも出ないな...)


走り始めてすぐ、瀬戸田の商店街を数キロ超えた地点で、なんと私のタイヤがパンク!

瀬戸田まで激しく走りすぎてタイヤが溶けてしまったのかと思いましたが(笑)、見事にタッカー(建築用の巨大なホッチキスの芯)が突き刺さっていました。

後で聞くと、中級班のヨネさんも瀬戸田でタッカーによるパンクにあっていたので、瀬戸田の道路に結構な数のタッカーが落ちてたのかもしれませんね...^^;


みなさんをしばらくお待たせして、無事パンク修理完了。

ライドを再開し因島に入ります。

初級なので無理せず、すぐさまコンビニで休憩。

例によって女性陣のおしゃべりが終わらないので、強引にリスタートですw


それにしても初級の皆さん、因島や向島の坂も平気な顔でついてきます。

なんだか相当レベルアップしてますね💦


尾道に渡る渡船乗り場までは、追い風を活かして一気に走り、渡船で海を渡ります♪

船に乗ると一気に「旅」気分が高まり、ウキウキしますよね〜


さて、本土上陸!

目指すはOnomichi U2!(と言ってもすぐ近く笑)

時節柄、レストランは空いてるのかと思っていたら結構な人が順番待ちしています。

私たちも少し待たされて席に着くことができました。


絶品パスタを堪能し、みんなご満悦♫



ランチを食べたら、もちろんスイーツでしょう。


すぐさま尾道の海岸通りを移動し、モナカアイスで有名な「からさわ」に突入!

私とのまっちさんは迷わずぜんざいを注文しましたが、女性陣はこの寒さの中、モナカアイスを注文してました^^;  

アイスに対する執念がすごい...笑笑



ランチもスイーツも楽しんだ後は、帰路につきます。

家族からお土産を頼まれていたのまっちさんのリクエストで、因島の「はっさく屋」に立ち寄りますが、すでに大福が売り切れとのこと!!

後でリポートを見てみると、中級ゆっくり班と快速班も立ち寄ったようでした。

きっと彼らが全部食べ尽くしたに違いない...( ̄◇ ̄;)


気を取り直して、レモンケーキで有名な瀬戸田の「島ごころSETODA本店」を目指します。

以前から気になっていたお店ですが、今回初めて入ることができました。

店内はサイクリストでいっぱいでしたよ。



のまっちさんは、ここで無事お土産をゲット!

店内のオーブンで少し焼いたレモンケーキは予想を超えた美味しさでしたヽ(´▽`)/


さあ、ここまで来ればゴールはもう目の前です。

初参加のhiroさんは距離的に物足りなかったのか、糸山まで走りたいと申し出があったのですが、帰りのあまりに強烈な向かい風と突風に今回はあきらめてもらい、当初の予定通り瀬戸田ゴールとしました。


その代わり、最後の瀬戸田の海岸線で一瞬先導をメンバーに任せて、hiroさんを連れて向かい風の中、ロングスプリント。少しだけ、ロードバイクが持つスポーツ面にも触れてもらいました。

(といっても私の脚力では、たいしたスピードは出ませんでしたが^^;)


ノン子さんは久しぶりのライドということで、道中少し遅れ気味でしたが、最後尾からのまっちさんが鉄壁のサポートをしていただきました。ありがとうございました<(_ _)>

また体力を回復されて、新たなノン子伝説を量産していただけると思います(笑)

しほさんも、これぐらいの距離はすでに余裕でこなせるレベルとなっていますが、グルメやおしゃべりが楽しくて初級を走っているとのこと。そういう楽しみ方もアリですよね✌︎('ω'✌︎ )


とういことで、残念ながら本家の「しまなみ縦走」は中止となりましたが、らくりん版「勝手にしまなみ縦走ライド」は、しまなみ海道を無事、一日満喫して終えることができました。

皆さん、お疲れ様でした!

また次回のグループライドでお会いしましょうヽ(´▽`)/



(KenGo)

Raku-Rin Cycle

「らくりんサイクル」は松山市を中心に、愛媛県全域で活動をしているスポーツバイク・チームです。